『残酷な天使のテーゼ』が教えてくれたタイアップの影響力

『残酷な天使のテーゼ』が教えてくれたタイアップの影響力

【ドラマ、アニメの主題歌といえばどんな曲を思い浮かべますか?】

音楽リリースと言えば「タイアップ」が全てと言っても過言ではない、それほどまでに平成の音楽を語る上で重要視されてきた文化です。

そもそもは90年代のJ-POP全盛期、トレンディドラマが仕掛けたことによりタイアップ至上主義の歴史は始まります。

まず『東京ラブストーリー』主題歌 小田和正『ラブストーリーは突然に』の成功がその価値を決定的にしたと言って良いでしょう。この曲を聴いただけでドラマの情景を思い浮かべる方も少なくはないと思います。それ程までに楽曲と作品の世界観が上手くリンクしており、他にも、先には
『男女7人夏物語』石井明美『CHA-CHA-CHA』から、
『101回目のプロポーズ』CHAGE&ASKA『SAY YES』
『あすなろ白書』藤井フミヤ『TRUE LOVE』
などが挙げられますが、やはり人気メディア×良質な楽曲が組み合わさればヒットは確実なもので、この90年代初期のトレンディドラマの成功例によりタイアップという方程式は揺るぎないものとなりました。

この音楽業界の一大ムーブメントによる影響は大きく、何でもありきのタイアップが蔓延することとなったのも事実ではあります。
分かりやすい例で言うと、有名少年漫画アニメにおけるビーイング系アーティストの乱用です。

90年代のアニメ全盛期ゴールデンタイム放送の人気作品と楽曲クオリティの高いび系のタイアップとなればまず売れない筈がありません。
ですがアニメの世界観と楽曲が上手くリンクしているかというとそうではなく、この手のタイアップは全くもって作品内容を無視したものではありました。
アニメはドラマよりも個性が強く出るものであり、より一層作品とマッチした楽曲が求められるものなのです。

そんな中J-POP最全盛とも言える90年代中期に、全国ネットではなくゴールデンタイム放送でもないものの、今後これ以上のヒットは産まれないのではとも思える大きなタイアップが出現します。

1995年放送『新世紀エヴァンゲリオン』主題歌 高橋洋子『残酷な天使のテーゼ』は、当時制作側がそこまでの大きなタイアップを意識しているようには思えませんでした。

及川眠子による詞は作品に対し独自の視点にて描かれているのが特長的です。
まず歌い手である高橋洋子を最優先と考えているのは流石です。年上の女性、いわゆる母親目線からの心情を綴り上げており、また楽曲的には高橋の声質や、編曲の大森俊之による間奏のコーラスからも更に宗教的とも言える精神性の高さを窺える内容に仕上がっています。

この「精神性」がエヴァンゲリオンの世界観を汲み取るという点において非常に重要なファクターとなっており、造り手の技術とセンス、想いが現れた結果だとも思えるのです。

次作『魂のルフラン』もタイトルからすぐ分かるように一貫として、天使、魂というスピリチュアル、そしてテーゼ、ルフランという外国語が引き継がれていることからもエヴァンゲリオン、ひいては楽曲制作陣のメインテーマとして外せない要素なのでしょう。

『残酷な天使のテーゼ』は後に平成で歌われたカラオケランキング首位に輝く国民的大ヒットとなりましたが、1995年の放送当初は誰もが予想しなかったことだと思います。
これは一概にアニメ『エヴァンゲリオン』シリーズの成功だけでは成し得なかったことです。

楽曲が作品を引き立ててこそタイアップの相乗効果は現れるというもので、作品の独特な世界観を、ダイレクトでなく極めて抽象的に表すセンス、そして時代とマッチしたキャッチーな音作りがあったからこそだと言えます。

この何十年に一度かとも思える稀有な素晴らしい事象を今後見る日はいつになるのだろうか?とも思えるほどであったのですが、それは2019年『エヴァンゲリオン』を覆す勢いでやって来ます。

次に続きます。

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